上の奥歯を両側とも失い、物が噛めないとのことで来院されました。
診察すると上の前歯のブリッジが壊れ、下の奥歯も虫歯で放置されている状態でした。
部分的な歯の喪失も見られ、全体の咬み合わせが崩壊する一歩手前というところでした。
患者様は歯科恐怖症で治療に対する恐怖感が否めず、安心して治療を受けたいとのご意向でしたので、まず全体の治療の流れについて詳しく説明をおこない、不安を取り除くことから始めました。
治療の流れとして、まず最初に左下の第一大臼歯(6)に抜歯同時インプラント埋入をおこない、手術に慣れていただきました。
その後、右下の第ニ大臼歯(7)・第一大臼歯(6)・第ニ小臼歯(5)にリッジエキスパンジョン法によるインプラント埋入をおこないました。
そして、徐々に手術の難易度を上げていくことを目標に、右上側切歯(2)・左上中切歯(1)へのインプラント埋入、右上第一大臼歯(6)の歯槽頂よりソケットリフト、左上の第ニ大臼歯(7)・第一大臼歯(6)への側方骨の開窓法によるサイナスリフトと手術を進めました。
すべてのインプラント埋入手術が終了し、咬み合わせが仕上がった段階で「本当にここにきて良かった。安心して心おきなく何でも食べられるようになりました」と感謝のお言葉をいただきました。
ソケットリフト:歯槽頂から人工骨を填入し骨の高さを増やす方法
サイナスリフト:側方骨の開窓法より人工骨を填入し骨の高さを増やす方法
リッジエキスパンジョン:水平的に骨幅を拡げる方法
治療期間 | 11ヶ月 |
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治療内容 |
インプラント手術:10本
治療内容内訳:上顎左側:中切歯(1)、第二小臼歯(5)、第一大臼歯(6)、第二大臼歯(7) 上顎右側:側切歯(2)、第一大臼歯(6) 下顎左側:第一大臼歯(6) 下顎右側:第二小臼歯(5)、第一大臼歯(6)、第二大臼歯(7) 初診時問診、レントゲン撮影、CT撮影、 骨造成手術:ソケットリフト(1本)、サイナスリフト(2本) リッジエキスパンジョン(3本) インプラント体埋入手術10本、上部構造物(人工歯) |
総治療費 | 2、990、000円 |
メリット |
歯を残せる可能性が高まる (ブリッジや入れ歯と異なり両側の歯を傷つけない)
咀嚼能力を維持・向上する効果 (よく噛めるようになる)
術後のメリット;メインテナンスにきちんと通われており健全な口腔環境を維持できている |
デメリット |
自費診療のため処置費用が高額
インプラント治療を適用できない場合があります(糖尿病、骨粗しょう症など全身疾患のある方) |
リスク 副作用 |
手術時の痛みや違和感(麻酔で軽減)
手術後に腫れや痛みを伴う(抗生物質、消炎鎮痛剤等の処方)
インプラント埋入手術の後、顎骨とインプラントを定着させるのに、一定期間経過観察をしますが、人により、稀ではありますが、定着しない場合があります
治療完了後、インプラントを良好に保つために定期メインテナンスが必要になります
ご自身の口腔ケア、定期メンテナンスを怠ると、
歯ぎしりや食いしばりなど無理な力がインプラント体にかかりすぎると支えている周囲の骨にダメージを与えることがあります(歯ぎしり防止マウスガードで対応可)
天然歯の歯周病に似た症状のインプラント周囲炎にかかる可能性があります。 |
ご覧いただいたように、インプラントには残存歯を保護する観点からすると絶大な効果があります。
咬み合わせをつくるにあたって、ブリッジや部分入れ歯あるいは総入れ歯での対応も悪くないと思いますが、欠損している部分に人工歯根を埋入し、咬み合わせを負担させることは、生涯に渡って歯を残し咬み合わせを保持する意味合いからすると、非常に有効であると私は考えています。
インプラント治療は残っている骨をいかに活用して人工の歯をつくるかにかかっています。
骨が不足している場合は、水平的に骨を拡げたり、垂直的に骨造成したりと、あらゆる方法でインプラント治療がおこなわれていますが、基本は患者様個々の咬み合わせがいかにスムーズになるように仕上げていくかがポイントです。