奥歯で物が噛めなくなりつつあるので、しっかりと噛めるようにしてほしいとの希望で来院されました。レントゲン写真では、左上の第一大臼歯(6)・第二小臼歯(5)部の骨の吸収が著しく、第二小臼歯は歯根破折も起こしており、その部分へのインプラント埋入は不可能である状態でした。
患者様と相談の上、第一大臼歯と第二小臼歯を抜歯したところ、第一大臼歯部は上顎洞穿孔(副鼻腔に穴が開くこと)を引き起こしたため、歯肉移植を施し穿孔閉鎖処置をしました。
第一大臼歯部の創面が閉鎖し、安定したのを確認した後、今後の治療の流れを患者様と相談しました。
その結果、右下の第ニ大臼歯(7)は抜歯同時インプラント埋入、左上犬歯(3)部にはリッジエクスパンジョンによるインプラント埋入をおこないました。
残っている骨を活用するために、右上の第三大臼歯(8)・第ニ大臼歯(7)および左上の第三大臼歯(8)にはインプラント傾斜埋入をおこない、一口腔単位でしっかりとした咬み合わせをつくりました。
現在では、左上奥歯が噛むたびに腫れていたのがなくなり、気にせずに何でも食べられると喜んでいただいています。
リッジエクスパンジョン:水平的に骨幅を拡げる方法
治療期間 | 18ヶ月半 |
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治療内容 |
インプラント手術:5本
治療内容内訳:上顎左側:3番(犬歯)、7番(第二大臼歯) 上顎右側:6番(第一大臼歯)、7番(第二大臼歯) 下顎左側:7番(第二大臼歯) 初診時問診、レントゲン撮影、CT撮影、 リッジエキスパンジョンによる骨造成手術(1本) インプラント体埋入手術5本(うち1本は抜歯同時埋入、3本は傾斜埋入) 上部構造物(人工歯) |
総治療費 | 1、630、500円 |
メリット |
歯を残せる可能性が高まる (ブリッジや入れ歯と異なり両側の歯を傷つけない)
咀嚼能力を維持・向上する効果 (よく噛めるようになる)
術後のメリット;治療後に具合が良くなったことから、口腔ケアに励むようになった メインテナンスにきちんと通われており健全な口腔環境を維持できている |
デメリット |
自費診療のため処置費用が高額
インプラント治療を適用できない場合があります(糖尿病、骨粗しょう症など全身疾患のある方) |
リスク 副作用 |
手術時の痛みや違和感(麻酔で軽減)
手術後に腫れや痛みを伴う(抗生物質、消炎鎮痛剤等の処方)
インプラント埋入手術の後、顎骨とインプラントを定着させるのに、一定期間経過観察をしますが、人により、稀ではありますが、定着しない場合があります
治療完了後、インプラントを良好に保つために定期メインテナンスが必要になります
ご自身の口腔ケア、定期メンテナンスを怠ると、
歯ぎしりや食いしばりなど無理な力がインプラント体にかかりすぎると支えている周囲の骨にダメージを与えることがあります(歯ぎしり防止マウスガードで対応可)
天然歯の歯周病に似た症状のインプラント周囲炎にかかる可能性があります。 |
ご覧いただいたように、インプラントには残存歯を保護する観点からすると絶大な効果があります。
咬み合わせをつくるにあたって、ブリッジや部分入れ歯あるいは総入れ歯での対応も悪くないと思いますが、欠損している部分に人工歯根を埋入し、咬み合わせを負担させることは、生涯に渡って歯を残し咬み合わせを保持する意味合いからすると、非常に有効であると私は考えています。
インプラント治療は残っている骨をいかに活用して人工の歯をつくるかにかかっています。
骨が不足している場合は、水平的に骨を拡げたり、垂直的に骨造成したりと、あらゆる方法でインプラント治療がおこなわれていますが、基本は患者様個々の咬み合わせがいかにスムーズになるように仕上げていくかがポイントです。